小説の書き方にルールはないけれどもセオリーはあります。

・ひとつの場面には最低でも原稿用紙二十枚以上を費やし、物語の中で連続して十分以上の時間を経過させる。
・その中では一流の人間による生きたやり取りで場面を形成する。
・セリフは一定数繰り返し、ひとつのシーンとして成立させる。
・セリフの数はワンシーンに40~50個が目標。
・ただし、セリフはキャラの人格を表すものに限る。(セリフだけを読んで誰が言っているのかわからないものはダメ)
・世界設定などの説明は章の冒頭、もしくは末尾に置き、ストーリーとの混在を避ける。(これについては次回に解説します)

 といったことです。繰り返しますがこれはルールではなく、セオリーのひとつです。
 これから外れた書き方がダメなのではなく、少なくとも主要場面ではこういう書き方をしたほうが、よりキャラが生きます。
 セリフの数が40~50というのは多く感じられますが、実際に書いてみるとだいたいこれぐらいか、もっと多くなるはずです。 *1





部屋の中を描写するときは、まず全体のイメージを書き、入り口の正面にあるものか、いちばん目立つものを書き、それから近くにあるものを順番に書いていくと読者がわかりやすくなります。 *2

情景をうまく書くには、自分が書こうとする場面を実際に図に書いて、どういう順序で描写するかを決めるのがいちばんです。 *2




はじめの十行に、「お約束」や世界や主人公について、なんの手がかりもなかったりする作品には、興味が持てません。 *3

 すべての個々の創作作品には、「これはアリだけど、このへんはナシね」という規制、作者と読者がこっそり交わす大事な無言の 「お約束」があります。……それがないのは(あるいは破綻しているのは)九九パーセント駄作です。ただの自我の垂れ流し、ご都合主義のいい加減です。……
 ヘタな応募原稿は、この大事な「お約束」を、一刻も早く読者に対して明確にするべきだとただの一度も考えてみたこともないか、わかっちゃいるんだけどもあんまりうまく提示できていないか、どっちかなのです。 *4

 これは、誰がどこでどうして、誰となぜどうする話なのか。この誰はどんなやつで、あっちの誰とどういう関係か。……
 読者はね、読み手はね。作者であるあなたから教わらないと、なんにも、なにひとつ、わからないんだよ。あなたがコトバにし、活字にし、地の文か会話か、とにかくなんらかの形で作品内に反映しなかった情報は、ただのひとつも知ることができないわけ。
 だから。……あなたにとってどーでもいいこと、興味のないこと、書くのがちょっと面倒くさいようなことであっても、それが読み手の読解の助けとして不可避であるならば、是非とも、入れておかなくてはならないのです。 *5

小説家が手抜きをすると、その分の苦労は読者にかかります。作者がちゃんと書いておいてくれないすべての部分について、読者は、汗水垂らして、想像力を働かせなくてはならないのです。 *6



(厄介な文章の癖を直すために) 村上春樹、森絵都、橋本紡など、一人称の名手で、文法的な間違いは絶対に犯さない作家の文章を模写するように薦めました。……
 もし、自分にそういう理屈では説明できない癖があると思ったら、好きな作家、特に文章の上手な人の作品を書き写すことをお薦めします。それもワープロで打つのではなく、手で書いた方が早く効果はでます。 *7







<出典>

*1:円城寺まどか「第七回 地の文で書くべきこととセリフの比率」
http://ncode.syosetu.com/n8903bs/7/

*2:西谷史『西谷史先生のライトノベルの書き方の教科書 1基礎編』(秀和システム、2013年) 28頁
*3:久美沙織『もう一度だけ新人賞の獲り方おしえます』(徳間書店、1994年) 31頁
*4:久美沙織『もう一度だけ新人賞の獲り方おしえます』(徳間書店、1994年) 22~25頁
*5:久美沙織『もう一度だけ新人賞の獲り方おしえます』(徳間書店、1994年) 27頁
*6:久美沙織『もう一度だけ新人賞の獲り方おしえます』(徳間書店、1994年) 66頁
*7:西谷史『西谷史先生のライトノベルの書き方の教科書 1基礎編』(秀和システム、2013年) 69頁